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月明かりの射す静かな庭

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ECOのフリージアサーバに生息中。現在の企画→ECO小説<運命の赤い糸>

クリステン君の神崎家訪問 4

ぶっちゃけ、この最後の落ちが書きたかっただけです(

ドミニオンドラゴンが出てきたのもこれだけのためだしな……


さぁ、ようやっとSAGA14をやるぉー!







クリステン君の神崎家訪問 4


「……」
 動けそうもない勇実を一目だけ見て、クリステンは永奈のほうを向いた。
 辺りは悲惨な状況になっていた。勇実が振るった鞭でところどころの壁や床には細かい傷が。中央のテーブルもぼろぼろ。いすは辺りに散らかっている。さらにはクリステンがゆがめた床も無残とあらわす他にない。
 そして、肝心の勇実が敗れた永奈は……驚いた表情をしていたが、やがて苦笑いのような笑みを浮かべる。
「まさか勇実が負けるだなんて……さすがにこれは予想してなかったわ……アハハ」
「さて、どうする神埼永奈? もしかして、次はあんたが相手してくれるのか?」
 クリステンがそう言うと、永奈は肩をすくめ、
「勇実。10秒以内に起きなさい。でないとクビよ」
 そう言い放つ。そして、ご丁寧に10からカウントダウンを始めた。すると、完全に動けなくなっていたはずの勇実が、震えながらもその場を立ち上がった。
「な……まだやるつもりか!?」
 クリステンが構える。だが、永奈がさらに言葉を続けた。
「勇実、応接間がひどい有様よ。片付けなさい。そうね、5分あげましょう。その間に、お客様とお話ができるようにしなさい。でないとクビよ」
 懐から時計を取り出す永奈。うげっと勇実の表情がゆがんだ。そして、まだ激痛が走るはずの体を動かして、手を数回鳴らす。するとドアをノックする音が。気配からして、数人が駆けつけてきたようだ。だが……ドアが開かない。当たり前だ、さっき内側から勇実が鍵をかけていたから。
「あ、あああぁぁ……」
 それに気づいたのか、ふらついた足取りでドアへと向かい、鍵を開ける勇実。するとようやと別のメイドたちが中に入ってきた。この場の有様に全員驚愕した表情を浮かべたが。
 背中をさすりつつ、てきぱきと勇実が指示を飛ばす。的確な指示だったが、その勇みがまるでぎっくり腰の老人のように腰を曲げ、フラフラなのでどうにもしまらない……
 永奈の指示から、正確には4分と32秒後……クリステンのストーンウォールで変形した床を除けば、応接間はもとの通りとなった。
「ど、どど、どうぞ、お客様……」
 勇実が椅子を引き、改めてクリステン、永久奈、ドミニオンドラゴンを席に座らせる。まだ勇実の体は痛むようで(気絶してもおかしくないぐらい本気で叩き付けたのだが)、しゃべっている言葉がまだたどたどしい。
 困惑しながらも三人はまた椅子に座った。
 あたりを見渡し、満足そうにうなずく永奈。そして、勇実に向かって、
「ありがとう勇実。さすがね」
 と、言った。勇実はほっと胸をなでおろす。
「ありがとうございます、おばあさま」
 だが、そう言った直後……
「減給は、向こう3ヶ月ね」
 という永奈の言葉にがくりと肩を落とした勇実だったが、それ以上何も言うことはなかった。軽く一礼だけして、勇実は部屋を出て行く。
「さて……」
 永奈が改めて3人のほうへ向く。
「お騒がせしましたね、ごめんなさい」
「どういうことだ?」
 足を組み、不機嫌そうな顔でクリステンは永奈を睨んでいる。先ほど勇実の鞭で傷ついた手のひらは、永久奈によって応急処置(ファーストエイド)がなされ、すでに止血されている。
「いやはや、永久奈が中央でお世話になった方がどれだけ強いのかと思いましてね。少し意地が悪いかと思ったのだけれど、勇実とちょっと力比べをしてもらおうかなって思って」
「お、おばあちゃん……そんなことのため……って、じゃぁさっきの話は!!? 婚約話は!!!!?」
 永久奈が叫びながらさっきの写真を探す。そういえばいつの間にかない。片付けている最中に誰かが持っていったか?
「ああ、あれ? 本当の話よ?」
「はぁ、よかった……演技だったんです……あれ? 本当の話……!?」
「ええ、といっても昔ですけどね……20年くらい前に御剣の当主と……そうなったらいいわねって」
「あれ……20年前って私生まれてないんだけど……(19歳)」
「まぁ、御剣の当主には私から言っておくわ。クリステンさん、もしかしたら御剣から刺客がくるかもしれないから気をつけてくださいね」
「……」
 にっこりと笑いながら言う永奈の言葉に、クリステンは苦々しく顔をゆがめたが、何も言うことはなかった。
「勇実を退けたあなたなら、まぁ心配は要らないでしょうけど。永久奈も本当に強くなって。以前は私や久奈(永久奈の母)の言うことに逆らったりはしなかったのに」
「おばあちゃん……」
「永久奈がこんなに強くなったのも、あなたのおかげなのでしょうね。神埼を代表して、改めてお礼を言わせていただきますわ……これなら、お二人に神埼を任せても大丈夫そうね」
「お二人にってことは、おばあちゃん……認めてくれるんですね! 私とクリステンさんの結婚!」
 永奈はこくりとうなずいた。うれしそうに永久奈がクリステンのほうを見ると、彼はやはり照れくさそうに視線をはずしている。
「そのために、クリステンさんの決意を試した部分もありますからね……神埼の権力は、いまや世界のバランスを崩しかねないほどのもの……神埼の力だけに目がくらんで暴走なんてされたら……大変なことになりますからね」
 十数年前にそんなことがあった。神埼の力に目がくらんだある人物が、その力を手中にするべく暴走した。偶然ファーイーストを訪れていた二人の冒険者によってなんとかその暴走は止められたものの、大切な家族を一人失うことになった。
「でも、大丈夫だとわかりました。神埼ではなく、永久奈を愛してくれたあなたなら、きっと永久奈も、神埼もいい方向へと導いてくれると信じています」
「……まぁ、努力する」
 クリステンがそういうと、永奈はにこりと笑った。そして、今度は永久奈のほうを向く。
「永久奈、わかっているのよね?」
「へ?」
 あまつさえドミニオンドラゴンの手を握ってきゃっきゃと騒いでいた永久奈(ドミニオンドラゴンは無表情だったが)。永奈の言葉に、首をかしげる。
「……まさか、本当にわかってないわけないわよね? 彼はドミニオン、あなたはエミルなのよ? 異なる種族間では子供は生まれない……これは経験則よ」
「あ……」
 この世界には三つの種族がいる。永久奈をはじめとするエミル、クリステンをはじめとするドミニオン、そして白い羽と金色の輪をもつタイタニアの三つである。そして、この世界にはこれらの種族のハーフは確認されていない。それゆえ、異なる種族間で子供を作ることは不可能という経験則がある。
 そして、それはつまり、永久奈とクリステンの間には決して子供が生まれないということを意味している。そして、永久奈が次期当主となれば……跡取りが生まれない。
「まぁ、久奈(永久奈の母)にはもう一人息子がいますから、跡取りにはおそらく困らないでしょうけど……お二人はそれでもかまわないと、そこまで覚悟していらっしゃるのよね」
 永久奈がクリステンのほうを見た。クリステンはうんとうなずき、
「仕方がないさ。こればっかりは……俺にも永久奈にも、神埼にもどうしようもないことだし……それでも子供がほしいときには……養子をとるっていう手もある」
 永久奈もうなずいた。
 子供ができないのは少しさびしいことだけど……
「ふむ、それは大丈夫だ」
 突然聞こえてきた声は、ドミニオンドラゴンだった。
「……へ?」
 突然の乱入に、クリステンが間抜けな声で答えた。はぁと大きなため息をつき、ドミニオンドラゴンがもう一度言った。
「だから、大丈夫だ、それは」
「いや……何がどう大丈夫なのか聞きたいんだが……確かに、3種族間で子供ができないのは経験則だから、もしかしたら超低確率でできるのかもしれんが……」
「ふむ、その超低確率云々かんぬんは知らんが、お前らの場合は……いや、『この家の場合』は違うのだろう」
 この家……神崎家の場合。その言葉が出て、永奈の眉がピクリと動く。
「この家の場合……神崎家ってことか?」
 クリステンがそう聞くとドミニオンドラゴンは、応接間にかけられていた歴代当主の写真……初代当主、神崎悠奈の前に立ち、まじまじとその顔を確認する。
「やっぱりだ。似ている。すごく似ている。神埼夜志奈に」
「神埼、夜志奈?」
 クリステンには聞き覚えがある名前だった。永久奈の親戚に、『斉藤夜志奈』という少女がいる。
 彼女のことかと思い、永久奈のほうを向いたが……彼女は首を振って、
「夜志奈ちゃんのことじゃないと思います。悠奈様の母君のことだと思います。悠奈様の母君の名前が神埼夜志奈なんです。夜志奈ちゃんの名前は、そのお母様から取られたんだと思います」
「ふむ。そうだ。私が言っているのはこいつの母親であろう、神埼夜志奈のことだ」
 こくりとうなずくドミニオンドラゴンにクリステンがさらに問う。
「で、それがどうしたんだ? 知り合いなのか?」
「私は直接の知り合いではないが、知人から話を聞いたことがある」
 知人? ドミニオンドラゴンはドミニオン界の守護竜……エミル界にも知り合いが多いのだろうか?
「まぁ、知人といってもニンゲンではないがな……祭殿とやらに祭られているのだろう、あやつは」
「へ……?」
 ぽかーんと、永久奈が口をあけた。
 祭殿って……うちの神様が祭られているっていう……
「この神崎家が代々祭っているのは、ファーイーストに古くから住み着いていた豊穣の精霊だ。この家の人間が代々プラチナブロンドであるのも、やつの特徴を色濃く受け継いでいるのだろうな。奴も目が覚める様なきれいな銀髪であった」
「ちょ、ちょっとまて!!」
 クリステンがあわてた様子でドミニオンドラゴンの話をさえぎる。
「受け継いでいるってどういうことだ!? もしかして……その神埼夜志奈って……!?」
「そうだ。神埼夜志奈は、豊穣の精霊と交わり子を成した。あいつがたいそう自慢していたからなぁ、いい人間の娘を見つけたって」
「うちの神様っていったい……」
 あきれた表情でつぶやく永久奈。永奈も……笑顔は変わっていないが、冷や汗のようなものを流しているように見えた。
「そして、その豊穣の精霊の力を宿して生まれたのが、神崎悠奈。神埼の血の力と呼ばれる不思議な能力も、すべて豊穣の精霊の血脈によるものだ。まぁ、それ以降は人と交わり続けたためにかなり薄くなってきているようだがな」
「……神埼の血の力の根源がそこにあったとは……で、それがさっきの話とどう関係が……?」
 クリステンが尋ねる。ドミニオンドラゴンはすぐに答えることはなく、クリステンのほうを見つめたまま黙っている。まるで、『ここまで話して、まだわからないわけではあるまい?』とでも言うように。
 なんとなくわかっている。クリステンにはわかっている、なんとなく落ちがわかる。だが……一片の希望をかけて問う! 目の前にいる世界の守護竜に!!!
「……奴は豊穣の精霊だ。その能力のひとつ……『どんな種族とでも交配することができる』というものだ。その能力を使って、奴は人間と子を成した。そしてそれはもちろん、子孫であるこの家の人間にも備わっている。おそらくは、そこの神埼永久奈にも」
「……」
「つまりはだ、ただの人間に比べ、神埼永久奈は他種族と子をなすことが出来る可能性が非常に高い。超低確率ではなく、通常の確率程度にはあるだろうな。だから、心配ない。お前らの間に子を作ることは可能だ」
 衝撃的な告白の後、沈黙が流れた。永久奈も、永奈も……何を言わない。そして……
「永久奈ああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」
 と、クリステンが叫んだ。びくっと永久奈が震える。
「あ、は、はい!!」
「お前、生理は!!!?」
「へ?」
「生理は通常通り来ているんだろうな? って聞いてんだ!!!」
「……」
 あまりに突然かつ、「アレ」な質問に、永久奈が戸惑う。そんな二人を見て、ドミニオンドラゴンは半眼で、
「お前ら……まさか子ができないからって……」
「答えろ、永久奈! どうなんだ!!!?」
 クリステンはドミニオンドラゴンのことは無視し、永久奈に詰め寄る。永久奈はえっとー……と、恥ずかしそうにしていたが、ついに……
「えっと……そういえば最近遅いなーなんて……てへ☆」
 と言った。
 びしっと、その場が凍りついた。永久奈だけが、顔を真っ赤にしてうつむいている。クリステンの顔色がどんどんと白くなっていった。そんな中、永奈が懐から電話を取り出し、ある番号に電話をかける。
「……あー、もしもし、久奈? 今すぐ式場を予約して頂戴。招待状を送るリストは私が作っておくからそれが出来たらすぐに招待状を出して。念のためマタニティーのドレスを……え? 何のことって? 結婚式よ!!!!! え? 誰のって? お前の娘だよ!!!!!!!」
 とりあえずその日は、長い神埼の歴史の中で、もっとも騒がしい一日となった。
 さらに後日、ちゃんとした検査の結果、永久奈が妊娠していないことが発覚し、クリステン君は安心のあまり4日ほど寝込んだという。


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by sei_aley | 2012-05-05 22:32 | ECOショートストーリー