人気ブログランキング | 話題のタグを見る
ブログトップ

月明かりの射す静かな庭

noblemoon.exblog.jp

ECOのフリージアサーバに生息中。現在の企画→ECO小説<運命の赤い糸>

第四話 『セイの場合』 前編


さぁ、ついに主人公のターンです。



次元転生の影響で力がころころ変わっているセイ君ですが、こんな感じ


タイタニア界(120) > 白銀時代(110) > ショートストーリー(99) > 夢見た白銀の空(60) > 青い剣の正義(50)

()内はテキトーに考えたレベル。ショートストーリーはゲーム内と同じ。


なので、次元転生を抜きにすると120レベル!

どんな強さだ\(^o^)/

ちょうどよく文字制限に引っかかるので、前編+中篇+後編では終わらないかもしれない……





第四話 『セイの場合』 前編


「これが今回の報告書だ」
 アクロポリスアップタウン、評議会館の一室……アルシアという名札のかかったその書斎の中に二人の人間がいた。
 二人とも銀色の髪をしている。今まさにぱさりと書類を机に放ったのは少年だ。その背中には淡い青色の羽……異世界からの来訪者、タイタニアである。
「うむ、ご苦労」
 その書類をひょいっと手に取ったのは、もう一人の銀髪。こちらは少女……のような風貌の女性だ。年は24歳。この部屋の主……アルシア=クレッセントフィールドである。
「まったく……毎度毎度ながら、お前の仕事は厄介すぎるぞ!」
 バン! と、机を叩く少年。
「何がだ、セイ?」
 そんな少年……セイに対し、アルシアは平然とそう言った。
「何がだ? じゃねーよ!! ただのアイアンサウスまでのお使いクエストだって聞いてたから気楽に行けば、向こうの巨大密輸団摘発の証拠じゃねーか!! 途中、どれだけ命を狙われたと思ってやがる!?」
「仕方ないじゃないか。正直に言ったらこんな仕事、請けないだろ?」
「断じて受けんわ! こんな国家レベルの仕事!! おい、報酬は10倍もらうぞ」
「ああ、もっていけ。どうせ私の金ではない。このアクロポリスに暮らす、いたいけな庶民の税金だ」
 肩をすくめながらそう言うアルシアに、セイは大きくため息をついた。
「くそ、こんな奴が次期評議長とは……お前が評議長に就任したら、俺は辺境に移り住むからよろしく」
「分かった。住所だけは知らせておけよ? 裁判所から出頭命令を出させるから。従わなかったら国家反逆罪で豚箱に入れてやる」
「……」
 間すらない素早い突っ返しに、セイはげっそりとした表情をしながら肩を落とす。
「まぁ、とりあえずこの件はこれで終わりだ。俺が運んだ証拠品で無事に密輸団も摘発終了。あとは裁判で勝手にやってくれってところだな」
「うむ、ご苦労だった……おい、何勝手に部屋を出て行こうとしている?」
「へ……?」
 ドアノブに手を掛けかけたセイの動きがぴたりと止まった。
「次の仕事だ、ほれ」
 そういって、アルシアは机の引き出しから新たな書類をとりだした。
「なんだと! ふざけるな、チビ議員!!!」
「何をそんなに怒っている?」
「俺は! 今! アイアンサウスから飛んで帰ってきたんだよ!!」
「ほぅ、別にそんな早く帰ってこなくてもよかったのに。向こうで観光はしなかったのか?」
「出来るか!! 俺が持っていった証拠で密輸団が摘発されたんだぞ!! ドコで残党が俺の命を狙ってるか分かったもんじゃない国に、1時間1分、1秒たりともいたくないわ!!」
「はっはっは、それもそうだな」
「お前……終いには本当に殴るぞ?」
 ジト目で睨むセイだが、アルシアのほうは別段堪える様子はなかった。
 くそぉ……冒険者時代はもうちょっと可愛げがあったような気がしたのだが……
「だが、そんなに悪い話ではないはずだぞ、セイ。何せ……お前の探し物が絡んだ仕事だ」
「……なんだと?」
 アルシアの言葉に、セイの表情から怒りが消えていく。すぐさま机に引き返し、アルシアの手から書類を奪い取った。そのセイの姿を見て、アルシアは満足そうに小さく口の端をあげた。
「ノーザン……だと?」
「そうだ。今度の仕事はノーザンだ。あの引きこもり王国、また裏で色々ややこしいことをやっているらしい。ノーザンに恩を売るためにも、自国で解決されるよりも先に私たちで証拠を挙げて解決したい」
「……『非公式の生物実験施設の調査』か……これが、どうして俺の探し物と絡んでくるんだ?」
「実は、もうすでに先行調査が始まっている。その調査報告で、2つの事が分かった」
 アルシアは、右手の指を2本立てた。
「2つの事?」
「一つ、この研究所の連中……かなり無茶なことをやって、とんでもない成果を挙げているらしい。しかもノーザン王国の内部に密通しているらしくて本当に性質が悪い。並みの諜報機関ではほとんど干渉できないのが実情だ」
「それで、俺に白羽の矢が立ったと……?」
「そうだ。お前なら魔法にも詳しいし実力もある。適任だろう」
 そして、アルシアは立てていた2本の指の一つをさっと折り曲げ、
「もう一つ。最近、連中がノーザンダンジョンで『何か』を見つけたらしい。それから少しして、ノーザンで原因不明の地震が発生し、ノーザンダンジョンを中心に明らかに手を加えられた魔法生物が多数発見された。奴らの研究にとって何かしら『大きな影響』を及ぼすものだと考えられる……お前の探し物は、それぐらい『強力』なものなのだろう?」
「……」
 セイは、しばらくその書類を見つめていた。
 ノーザンか……懐かしい国だ。もう何年も行っていないが……あれは何年前だったろう? まだ彼女と世界を旅していた頃に……
 そのとき、こんこんと部屋のドアがノックされた。
「誰だ?」
 アルシアがそう尋ねる。セイは書類を持ったままソファーのほうへと移動し、そのままばたんと腰を落とした。
「アルシア様、レミアさんのところから冒険者の方を連れてきました」
 その声には聞き覚えがあった。
 アルシアの秘書の女性だ。確か名前はウォレンという。
「おお、ちょうどいい。入れ」
 ちょうどいい? アルシアの言葉に妙な引っ掛かりを覚えたが、書類から目を離すことはしなかった。
 すると、ドアが開いて一人の青年が入ってくる。赤い髪をした……剣士であるようだった。
「あ、あの……カイアスって言います。レミアさんの紹介で、仕事をもらえるって聞いたんですけど……?」
 青年、カイアスは畏まった様子でそう自己紹介した。
 レミアのところからの冒険者……またあの胡散臭い占い屋を利用しているのか。
「待っていたぞ、カイアス」
 アルシアがそう言った。この冒険者には一体どんな厄介な仕事が舞い込むのだろう……まったく持ってご愁傷様である。
「は、はぁ……えっと、もしかして、アルシアって……?」
 アルシアのほうを見て、困惑した表情を見せている。まぁ、知らない人から見たら当然の反応だろうか……アルシアの風貌はどう見ても小学生。セイが初めて会ったときからまるっきり変わっていない……
「うむ、私がアクロポリス評議員、アルシア=クレッセントフィールドだ。こっちの目つきの悪いドルイドは、セイ。今回、こいつと一緒に仕事をしてもらう」
「一緒に……?」
 何? 今なんと言った??
 ちらりと、アルシアのほうを見る。彼女はまったく知らん顔をしていたが。
「詳しくはこの書類に書いてある。早速で悪いが、ノーザンへ行ってくれ」
「……へ?」
 ぱさりと、アルシアは机に封筒を置いた。おそらくは、この手の中にある書類と同じものが入ったものだ。
「ま、仕方ないな」
 何を言っても……おそらくは始まらないのだろう、ノーザンへ行かない限りは。
 だが……なんとなくいつもより嫌な予感がするのはなぜだろう? いや、そんなことよりも今は……目の前の『探し物』の方が重要だ。
「……さっきの話、本当だろうな?」
 アルシアに向かって、そう尋ねる。すると彼女は意味深な笑みを浮かべて、
「真実は自分の手で探し出す。冒険者とはそういうものだろう?」
 と、言った。


「……ったく、今度の仕事は20倍もらわないと割に合わない……」
 セイは、数日前のアルシアとのやり取りを思い出してやるせなさに胸が一杯になった。
 セイがいるのは……おそらくノーザンダンジョンの下部だ。しかもかなり深いところ、クレバスの一番下に落ちてきたようだ……そう、あのミニードゥの自爆によって。
 カイアスは、まだ気絶している。その体には傷一つ無い。数百メートルのがけを滑り落ちてきたにもかかわらず。そのかわり、セイの服はところどころがぼろぼろだった。だが、やはり彼も傷は見受けられない……代わりに、セイの周りにはおびただしい血のあとがあったが。
「う……?」
 そのとき、カイアスがうめき声と共に目を覚ました。上半身を起こしたときに、軽く赤い髪が揺れる。
「……セイさん?」
 カイアスがこちらを向いて名を呼ぶ。まだ、状況が飲み込めてないらしい。
「大丈夫か? カイアス?」
 そういってやると、ようやっと状況が分かってきたようで、カイアスの顔が青ざめていくのが分かる。
「あ、え……俺たちは……?」
「あのクソウサギの自爆で、一番下まで叩き落されたんだよ」
 セイは上のほうを指差す。その上を見ると……ほぼ垂直の壁がすらーっと深い闇の奥まで続いていた。一体どれほどの高さがあるのか……カイアスには想像も出来なかった。
「じゃぁ、ここはノーザンダンジョンの下?」
「そういうことだな。まったくノーザンの連中め……ここまでして自分たちの汚点を隠し通すつもりか」
「……汚点?」
 首をかしげるカイアスに……セイは少しため息をつき、荷物の中からしわくちゃになったあのアルシアの封筒を取り出した。
「見ろ。今、俺たちがこうなってる元凶だ」
 カイアスに差し出すと、彼は中身を取り出して読み始めたようだ。
 契約内容をここまで確認しないとは……彼に500万の借金が出来た理由に納得がいったセイだった。
「……非公式の生物研究施設の調査?」
「そうだ」
「……こんな仕事だったのか」
 ぽつりと言ったカイアスの言葉を、セイはしっかり聞いていたが無視した。
「女王ヴェルデガルドは関与して無いだろうが……その周りのかなり上部が関与してるみたいだな。別の事件を用意して、よからぬ噂を聞いてやってきた冒険者たちを罠にはめてる」
「罠……?」
「……ミニードゥの脱走事件だよ」
 セイは大きくため息をついた。
「やってきた冒険者には調査を許可するように見せかけて、ミニードゥの脱走事件を追わせる。ミニードゥはノーザンダンジョンにいて、冒険者を待ち構え……この通りさ」
「……?」
 またしても首をかしげるカイアスに、一つ、また一つとセイの額にしわが増えて行く。
「だからな、カイアス……あぁ、もういいよ。説明するのも面倒くさくなってきたし、カイアスがこの事件を理解してもこの状況はぜんぜん好転しないよな、そうだよな、うん、俺が馬鹿だった」
「いや、あの……なんだかわからないけど、分からなくてごめんなさい……」
 もういいよ……と、かなりげっそりしたような顔で、ようやっとセイが立ち上がった。ぼろぼろになった司祭の服……セイは首を覆う厚手の布を取り払う。それはもうぼろぼろになっていた。
「さぁ、いくぞ」
「行くって……?」
 立ち上がったセイに遅れて、カイアスも立ち上がる。
「決まってんだろ、俺たちを罠にはめてくれたクソボケどもにしっかり御礼をしに行かないとな」
「へ……?」
 アルシアの言ったことは本当だったようだ。
 俺の『探し物』はここにある。もうすぐ近くに……分かるのだ、肌がちりちりするこの感覚は久々だ。

続く
by sei_aley | 2009-06-23 00:26 | ECO小説<夢見た白銀の空>

by sei_aley