アルマの樹 12 前篇
12話で卒業式までやって、後日談の13話がオリジナル
〇登場人物
・アレア=レフィス
去年の守護魔騒動に引き続き、アルマ騒動に巻き込まれた元冒険者の少女。
面倒事は嫌いなのに頼み事はなかなか断れない難儀な性格のためか、2年連続で厄介ごとに巻き込まれている。
冒険者時代に右肩を負傷し、現在右腕が動かない。利き腕ではない左腕で剣を振るうが、それでも並み以上の実力である。
アルマ学校では家庭科の先生として、アルマたちに裁縫や料理を教えた。とくにダークフェザーは最初の生徒だったこともあり、アレアによくなついていたようだ。
だが、アルマ学校が本格的にスタートすることを機に、先生を辞めることになった。
・エニア=セレラル
アレアにつき従っているタイタニアの少女。
その正体は、タイタニア界を震撼させた魔女の一人。東に広がる広大な森の主。東の黒い魔女、冥界の姫とも呼ばれる。冥界の王と契約した唯一の魔女であるため、すべての死神は彼女に従う。
タイタニア連合国発表の危険度指数は『出会ったら即諦めるレベル』。ちなみに、これは最上位から2番目のランク。
天上天下唯我独尊の女の子。お気を付け下さい、彼女はドSです。
自分を守ろうとしてくれるアレアを慕っている。これまでタイタニア界では問答無用に恐れられてきたため、家族のように接してくれるアレアは彼女にとって本当のお姉さんであるようだ。
・セイ・アレイ=ディアーティア
タイタニアの少年。結構昔から冒険者をやっているようで、知識は豊富。
エニアがぼけることが多いので、ツッコミに回ることが多い。
アルマ学校では特に先生ではなかったが、いろいろな知識を持っているせいか、シーホースには気に入られていたようだ。
アルマの樹 12 前篇
〇アップタウンにて
????:お待ちしておりました、お姉さま
アレア:あら、ロウゲツ……だったかしら
エニア:(;´Д`)お待ちしておりましたってことは……
ロウゲツ:はい、姫様。お姉さまや姫様が知ってのとおり、ぷるぷる様がアミス様と代わるようにして倒れられました。
アレア:そうね。んで、気が付いたって聞いたんでここまで来たんだけど。
ロウゲツ:はい……何とか一命は取り留めたのですが……そうですね、直に見てもらった方が分かりやすいでしょう。今、ひもを下します。
エニア:(;´Д`)o0(すごい嫌な予感がする……なんだろう、この胸騒ぎ)
〇アミスの飛空庭にて
アミス:あ、アレア、エニアさん
アレア:アミス、ぷるぷるが目覚めたって聞いてきたんだけど……
ぷるぷる:……!
エニア:お、ぷるぷるよかったねぇ!! 目が覚めたのね!! 遊びましょう!! ありの触覚抜きごっこしよう!!
ぷるぷる:(;´Д`)!?!?!?!?!?!?!
アミス:エニアさん、うちのぷるぷるに変なことを教えないでもらえる?^-^#
エニア:(;´Д`)すんません
アレア:んー、見たところ、前とあんまり変わらないような……? もしかして、人の姿になれなくなったのかしら?
ロウゲツ:それもあるのですが……ぷるぷる様はこの一年ほどの記憶をすべて失っておいでです。
アレア:……ん?
エニア:……あれ?
ロウゲツ:? どうかされましたか、お二人とも?
アレア:いや、なんかどっかで聞いたような話だなって……
エニア:なぜかしら……ちょうど一年前もそんな話をしてロウゲツを殴った記憶があるわ。
ロウゲツ:姫様。確かにアレアさんの記憶喪失の事で(フシギなタマゴ最終話参照)、姫様には大層なお怒りを受けましたが、殴られてはおりません。
バウ:ぷるぷるちゃん! 本当に、僕たちのこと、覚えてないですか!?
ぷるぷる:……!!
ダークフェザー:アミス先生の後ろに隠れちゃったわ……
アミス:私のことは覚えているみたいなんだけど、話してみたら、アクロポリスに来たこと自体覚えてなくて……なんとか、去年の終わりくらいのことまでは覚えてくれているみたい。
アレア:じゃぁ、私やエニアの事も……
アミス:学校のみんなの事も覚えてなくて、みんなが驚いて話しかけたときに、ちょっとびっくりしちゃってるみたい……
ぷるぷる:……
アミス:大丈夫よ、ぷるぷる。みんな、あなたのことが大好きなの。あなたを心配しているのよ。
ロウゲツ:事情を伺ったところ、ぷるぷる様はこの学校に集まったアルマ……偶然、人の姿になる力と、人の心を手に入れた子たちとは少し違い、元々人の心に近い心を持っていても人の姿を取ることはできなかった……ということですね
エニア:確か、6月ごろに変身できるようになったって……
ロウゲツ:何分、今までこのような例は聞いたことがないのですが……おそらくは、無理に人の姿になり、その影響で自分の中のなんらかの力を消耗しつくしてしまったのでしょう。
アレア:セイ君もそんなようなこと言ってたわね……無理に変身して、いろいろツケを払っているんじゃないかって。
ロウゲツ:セイ君……? それは他の守護魔からも聞いたことがある、白ウニ君ですかね?
アレア:(;´Д`)え? なんだって? 白ウニ? あいつはいつの間に海洋生物になったの?
エニア:さー? アハハハハハ(*´▽`*)
セイ:(;´Д`)だから、笑いすぎだって言ってんだろ、腹黒魔女。
アレア:あら、セイ君
ロウゲツ:お初にお目にかかります、タイタニアの賢人殿。私はロウゲツ。12月の守護魔でございます。
セイ:アンタがロウゲツか。お前に一つ言っておくことがある。
ロウゲツ:はい?
セイ:お前ん所の、あの中二病のな。人に変なあだ名をつけるのをやめさせろ!!!
ロウゲツ:アハハ、わかりました。きつく言っておくことにしましょう、白ウニ様
セイ:(;´Д`)
ダークフェザー:ねぇ……ぷるぷるの記憶はもう戻らないのかしら? 春先に行ったピクニックや、一緒に受けた授業のことをお話できなくなっちゃうの?
ロウゲツ:これは予想にすぎませんが、ぷるぷる様は人の姿に変身する時に、最初は体力を、次に気力や魔力を消費していたのだと思われます。
ロウゲツ:それらも底をつき、人の姿を保つことができなくなりそうなときに、おそらくぷるぷる様は無意識のうちに自分の根源にある力を消費してでもアミス先生をお守りすることを選んだのでございましょう
ローキー:根源に、ある、力……? それはいったい、なんなのじゃ?
ロウゲツ:一つは命……もう一つはその心……誰かのことを強く思う力でございます。それについては……
ミニー:おじさまぁ、ミニー難しいことはよく分からないのよぅ! でも、ぷるぷるがミニーの事を覚えていてくれないのは、すっごくさみしいのよぅ! お願い、何とかしてよぅ!
ロウゲツ:……ふむ、方法は……果たして、あれならば……?
アミス:……みんな…………
エニア:!?
セイ:!?
アレア:ん?
オートメディック:ちょっと待って、誰か来た……あいつ、今頃になってようやっと来たのか……
??:話は聞かせてもらった。どうやら、余の出番はないかもしれんが、入れてもらっていいかな?
???:こんにちわー、なんだか大変そうだけどあたしの姉妹が御厄介になってるって聞いてきたんだ。この子ともども入れてもらえるかな? もしかしたら、力になれるかもしれないし……ね?
シャノワール:お前、も……いや、妹よ、よく来てくれた。今は事情が事情なんだが……
セイ:これでネコも勢揃いか……つーか、それよりも問題なのはそっちの……
スモモ:あ、おねえちゃん! えーっと、スモモだよ! あと、この子がデス! なんだかえらそーな子だけど、仲よくしてあげてね!!
デス:おい、モモネコ。勝手に人のことを……まぁよい。今はそんなことよりも……姫、お久しゅうございます。
エニア:(´・ω・`)やっぱりアンタか。きな臭い匂いがしていたのよ全く。
デス:昨年から覚醒を始めたアルマたちは世界各地に散らばっていましたので。
サラマンダー:あ! あねごじゃーん! ひっさしぶりー!?
シーホース:あら、あの時のアルマ様。エミルの世界に来る際にはお世話になりました♪
セイ:こいつがほかのアルマを誘導していたのか……
ロウゲツ:あなた様もアルマのようですが……まずは、ご用件をお伺いしてもよろしいでしょうか?
デス:ふむ……いかにも、余はデス・アルマ。本来であれば失われる命を悼みその魂を刈り取るのが余の務め……しかし、その必要はなかったようなのでな。今のところは物見遊山、といったところか
エニア:え? サボってないで働けよ?^-^?
デス:(;´Д`)す、すみません……
アレア:(;´Д`)あんただって特に働いてはいないでしょうよ……うちに収入入れたことなんてない癖に。
エニア:ァ '`,、'`,、('∀`) '`,、'`,、
ロウゲツ;それはそうとデス・アルマ、あなたは自分自身やアルマについていろいろご存知のようですが……そのことについて……いえ、今はぷるぷる様の記憶を取り戻すすべを何かご存知であれば、お知恵を拝借したいところなのですよ。
デス:あまり買い被るな。ある程度効かせてもらったが……そのプルルが記憶を失った経緯と、貴様の予想を聞かせてもらおうか。そうしないとできるともできんとも言うこともできんのでな。
☆ロウゲツ説明中☆
デス:ふむ、なるほどな……人の姿になるためにいろいろと犠牲にし、心までも蝕んだということか
セイ:……
デス:だが、まだまだ甘いな。余の見立てでは、いまのぷるぷるは穴の開いた風船のようなものだ。ほおっておけば、まだ記憶は漏れだし、徐々に失われていくことになりか年……としたら?
スモモ:だからさー
エニア:もっとわかりやすくしゃべりなさいよ^-^?
デス:(;´Д`)も、申し訳ありません、姫……ごほん、余の見立てでは、このぷるぷるは未来を前借して今使っていた、というのが正しいように思える。その執事の言うとおり、今現在の命は助かったが……これから先の命がどこかでふっつりと足りなくなっている可能性もある。
エニア:ふっつりと足りなく?
デス:いまのぷるぷるには「未来を生き延びる」ための強い思い……命への執着がないということです。自分の存在をかけても守りたい相手を守れたとわかって、ある意味燃え尽きてしまった、という感じではなかろうかと。
アレア:つまり、その生きる執着とやらを思い出させてやればいいわけね。
エニア:……
ロウゲツ:……
デス:それはそうだが……なんでみんな「またかよ……」みたいな顔をしておる(;´Д`)?
エニア:いや、だって……もうそういうのは去年の今頃やったし……どうせ熊島に行くんでしょ?
ロウゲツ:さすがは姫様。去年のイベントをよく学習されていらっしゃる。
アレア:でも、去年は思い出チケットを使ったんでしょう? またあれを使うなら代償が必要になるわ。
アミス:だ、代償!? そ、それはダメ! いくらぷるぷるを助けるためだからって、他の誰かが代償にだなんて……
セイ:思い出チケット?
エニア:ほら、記憶を代償にする召喚術。タイタニア界で禁術指定されてるあれ。
セイ:あー、あの禁術か……つーか、使ったんですかエニアさん、あの術(;´Д`)?
エニア:わ、私は使ってないわよ! 使ったのはそこのバカ守護魔よ!!
ロウゲツ:ウルゥ様をお助けするには仕方のないことでございました
セイ:ふーん……まぁいいや、じゃぁ俺がやってやる。
アレア:へ……? セイ君、思い出チケットが使えるの?
セイ:まったく同じ術じゃないけど……熊島で思い出を集めてきてくれるなら、それをきっかけにしてぷるぷるの記憶を戻すことは可能だよ
エニア:……去年もセイ君がいれば何も問題なかったんじゃないかしら……
ロウゲツ:アッハッハ、さすがタイタニアの賢人殿。あのウヅキが気に入るわけです。
アレア:……そういえば
エニア:?
セイ:?
アレア:……アーシィは?(;´Д`)
セイ:…………寝坊
アレア:……あの子は全く……
〇熊島にて
アレア:えっとー。どうするの?
エニア:そっか、姉さんは去年は引きこもっていたんだっけ
アレア:(;´Д`)どうも申し訳ございませんね
エニア:まずは!! そうね!! 上着から脱ごう!!
アレア:そんなに一人でやりたいというのなら異論はないわ。私はアミスと待ってるから。
エニア:すみませんでした、一緒に来てください。去年は本当にひとりでさみしかったですorz
アレア:(;´Д`)はいはい……まったく、あんたは時々、本当にあの『黒い魔女』なのかどうなのか本当に疑わしいときがあるわね……
ポロン:あ! アレアさんにエニアさん!
エニア:ぬ、どじっこ助手……
パケル:……なぜ気が付いたらまたここにおるんじゃ……?
アレア:あら、フシギ団の。これが……思い出?
エニア:そう。この季節になると色々な記憶がこの島に流れ着いてくるの。そのなかで、自分たちに影響が強い思い出が具現化するのね。
アレア:じゃぁ、こいつらは本物じゃないと?
エニア:イエース!! つまり! ダムネイションで四肢をぶった切ろうが大丈夫!! 本物じゃないんだから!!
ポロン:( ゚Д゚)Σ!?
パケル:( ゚Д゚)ΣΣ!!!???
セイ:(;´Д`)いや、駄目だからね。具現化した思い出だからって無茶しちゃだめだからね
アレア:あら、セイ君?
セイ:思い出とはいっても、本人たちの意識と少なからずつながっているんだ。まぁ、本人たちの夢の中にお邪魔している感じかな。だから、身体的には確かに影響はないけれど、四肢をもがれるような夢を見たらトラウマになるだろう!(;´Д`)
エニア:ち! 毎年のお化け屋敷の憂さを晴らそうと思っていたのに!!
セイ:(;´Д`)今年は無かったろう、お化け屋敷……お前が直談判したせいで
アレア:……あんた、私が知らない間に何したの……?
エニア:べ。べべ、べっつにー!? そ、それよりも早く思い出を集めなきゃ!!
セイ:つーか、こいつらってなんだ? 俺は会ってないぞ。
アレア:これは……サラマンダーの時ね。花火を打ち上げたんだっけ
ポロン:そうです! サラちゃんさんのために博士が花火を打ち上げてくれました!
パケル:ふん! 世間知らずのお転婆に、世界の広さを教えてやったんじゃ!!
セイ:(;´Д`)迷惑博士がずいぶんと偉くなったものだな
パケル:セイ殿!! そういえばいいところに!! 実は先日、ポロンのやつが実験中の薬を間違って排水溝に捨ててしまって大変なことに
セイ:(;´Д`)しるかああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
母ちゃん:がう!!
アレア:あら、バルルのお母さんじゃない
エニア:おおー、マイマイの!!
セイ:( ゚Д゚)これがバルルの……
母ちゃん:がうばう!
アレア:なんて言ってるの?
エニア:『姉さん可愛い』って。
セイ:(;´Д`)んなわけねーだろ
バルル:か、母ちゃん! なんでここに!!?
アレア:(;´Д`)あれ? なんでバルルがここに?
エニア:姉さん、思い出思い出
アレア:あ、ああ……なんだかややこしいわね……
母ちゃん:ばう♪
バルル:え? ちゃんと勉強しているかって? ちゃ、ちゃんとやってますよ! アレア姉さんの授業で、シチューだって作れるようになったんですよ!
アレア:……
バルル:アレア姉さんたちには本当にお世話になりました。馬鹿なことで親子げんかしていた私に、おせっかいを焼いてくれて……今度は、私がアレア姉さんやアミス先生、あの学校の役に立つ番です!
エニア:……
セイ:……
アレア:さ、次に行きましょう
悩める芸術家:やや! 君様は!!
エニア:……なんだっけ?
セイ:俺に聞くなよ、俺は知らないぞ。
アレア:あれだ。ミニーの時の画家。
エニア:ああー……ごめんなさい。
セイ:(;´Д`)お前なにした!!?
アレア:たしか、ミニーの絵を手直ししようとして……赤がなかったからって自分の血を……
セイ:馬鹿かお前は。血はすぐに酸化して黒になるだろうが。
アレア:(;´Д`)だから、赤とか黒とかいう問題ちゃうわ!! これだから魔女も賢人も全く!!!
DEMの冒険家:むむ、君はこの前……
エニア:おおー、DEMの変なおっさん
セイ:(;´Д`)変なって……お前に言われるなら相当だな
アレア:これは何の時のやつ?
エニア:あのー……アミス先生が倒れたときに、薬を作るんだって言ってオートメディックがあのー、問題を出したからー、シモちゃんが図書館で……
セイ:(;´Д`)全くわからん
DEMの冒険家:心が一体どこにあるのか聞きに来たね
エニア:そう! 私もそう思うわ!!
アレア:あんた……私やセイ君がいないと本当に適当ね……
魔法使い風の人物:ん? 君たちは……
エニア:……誰?
セイ:白い使い魔の事件の時にエンシェントアークに行ったろ? その時にいたやつだ
エニア:……ああ、うん!!
アレア:(絶対覚えてねーな……)
魔法使い風の人物:(絶対覚えてない……)
セイ:あの時もいろいろ大変だったな……
魔法使い風の人物:そういえば、白い使い魔は元気かな?
アレア:ええ、元気に学校に行っているわ
魔法使い風の人物:そうか、それはよかった。あの子は私にとっても妹のような存在だからな。
アレア:……
魔法使い風の人物:私も両親も研究者だったから、研究で離ればなれになってしまってて……両親があの子に出会えて本当によかった。
アレア:そうね……一人ぼっちは、さびしいからね
続く
by sei_aley
| 2013-01-27 12:35
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